プリムの祭り
聖書暦12月、西洋暦2〜3月頃


http://www.jewisheastend.com/purim06.htmlより引用
エステル書の巻物「メギラー・エステル」を広げているところ
ちょうど、ハマンの10人の息子たちの名が記載されているところが広げられている

プリムの祭りとは:

プリムの祭りの「プリム」は、セム語系アッカド語の「プル」(くじ)の複数形で、ヘブライ語に取り入れられた言葉で、ペルシャ帝国の大臣であったハマンの奸計によって、ペルシャ帝国に住むユダヤ人の殲滅の日を決めるために用いられたものです。くじによってユダヤ人殲滅の日は、アダルの月(第12月)の13日と決まりました。しかし、モルデガイの従妹(あるいは姪)であり、義理の娘であるエステル(ヘブライ名は「ハダサ」)が王妃であり、ハマンの奸計を見破って命がけで王に執り成しをし、ユダヤ人殲滅を防ぎハマンの一族を滅ぼしたことに由来します。プリムの祭りについては、旧約聖書の「エステル記」にその由来が書かれています。

歴史的背景:

紀元前586年、南ユダ王国はバビロニア(新バビロニア帝国。欧米では「カルデア帝国」と呼ばれる)によって滅ぼされ、多くの住民はバビロニアへ捕囚として連行されました。この新バビロニアは紀元前539年にペルシャ帝国の王キュロス2世によって滅ぼされました。このキュロス王によって、ユダヤ人の一部はエルサレムに帰国が許され、神殿を建て直すことが許可されました。(エズラ、ネヘミヤ書参照)

エステル記はこのペルシャ帝国のクセルクセス1世(ギリシャ語での名前。ペルシャ語ではフシャヤールシャ1世、あるいはヘブライ語ではアハシュエロス王とも。治世は紀元前485年-465年)の時代の出来事であると言われていますが、史実であるかどうかという論争は今でも行われています。

物語:

アハシュエロス王は王位についた後、180日間に渡る祝宴を開き、その時后妃ワシテ(ワシュティ)に命じて祝宴に出るように命令しましたが、彼女はそれを拒絶したためこれを廃し、その代わりとして帝国中の乙女を集め、その中でユダヤ人の乙女エステルを后妃としました。ベニヤミン族のモルデカイは、自分の従妹(姪とも)であり、両親を亡くしたハダサ(エステル)を養女として育てていましたが、彼女の美しさは宦官ヘガイの目に止まり、彼女は後宮に召し出されました。その後、王はアガク人ハマンを宰相に任命しました。ハマンに跪いて敬礼するようにとの王の布告に対してモルデカイは従わなかったため、腹を立てたハマンはがユダヤ人を絶滅しようとする企みを抱きました。それを知ったエステルは叔父モルデカイの説得に応じ、命がけでアハシュエロス王に執り成しをし、かえって大臣を死刑に追い込むことに成功し、ユダヤ人殲滅作戦を未然に防ぐことができました。その後モルデガイは宰相となりました。(エステル書参照のこと)

過去のツケは子孫が払う:

ここで興味深いことは、悪の宰相ハマンは「アガク人」で、彼はIサムエル記15:8のアマレク人アガク王の子孫と言われています。(ユダヤ教の伝統)サウル王は神によってアマレク人を完全に「聖絶」するよう命じられていたにもかかわらず、アガク王を生け捕りにし、肥えた羊や牛の最も良いもの、子羊とすべての良い物は聖絶せずとっておきました。しかし、サムエルはサウル王に命令を守らなかったことを非難しましたが、サウル王は自分の面子を気にして言い訳をするだけでした。しかし、サムエルはサウル王に厳しく王位は取り去られると預言しました。

さて、時代は下ってアガク人ハマンがペルシャの宰相である時、モルデガイはエステル記2:5に「ベニヤミン人キシュの子シムイの子ヤイルの子」と書かれています。サウル王はベニヤミン族であり、同族のモルデガイが、その姪(あるいは従妹)であるハダサ(エステル)と共に、ユダヤ人を殲滅しようとするハマン(アマレク人の子孫)を逆に滅ぼしました。

サウル王も「キシュの子」ですが、モルデガイから見るとキシュはモルデガイの曾祖父にあたるので、サウル王のキシュとモルデガイの曾祖父のキシュとは別人であることが分かりますが、同じ部族「ベニヤミン」であるので、薄いながら血統はつながっています。(モルデガイの曾祖父キシュは、バビロン捕囚の時に一緒にバビロニアに捕らえ移された人々の一人であることが、エステル記に書かれています。)

過去、サウル王が失敗したツケは、子孫によってきっちり払われていることが、この物語の中にははっきりとは示していませんが、聖書を通して読むと見えてくるものがあります。

プリム祭「メシアニック・ジュダイズム」から引用:

これは、ペルシャ帝国時代にあった、イスラエル人を殲滅しようとする邪悪な計画から、解放されたことの記念である。エステル書は、ハマンの邪悪な計画と、王妃エステル(ハダサ)の努力について記録している。彼女は王に働きかけ、自分の民を救ったのであった。プリムは冬の終わり、アダルの月にあたる。この祭りは、劇や歌、仮装そしてエステル書(メギラー)の巻き物を読むのが特徴である。それが読まれている間、ハマンという名を消し去るために、子供たちは「グレゴー」<取っ手でぐるぐる回して、がらがら音を立てるおもちゃ>で大きな音を立てる。この祭日は、イスラエル史上にあった、他の様々な危機と解放の物語を思い起こす時期でもある。メシアニック・ジューは、創造性豊かにあらゆる方法でこの祭りを行うことができる。特別な劇、対談、コンサート、霊的な集会、そしてもっとさまざまなことが企画され成功している。 (引用以上)

最古のイスラエル民族殲滅計画の記録:

エステル記は、ある意味最古の「イスラエル民族殲滅計画」の記録とも言えます。このように、民族を丸ごと「浄化」するという為政者の行為は、特にイスラエルに関しては紀元前450年前からありました。それ以降、ユダヤ人を丸ごと滅ぼそうとする異民族の企ては、特に近代に顕著に見られるようになります。古代ローマ帝国は、ユダヤ人を完全に殲滅する意図はありませんでしたが、イスラエル・パレスチナ地方での内乱と近隣のギリシャ系民族との軋轢がひどく、ローマ帝国が派遣する悪徳総督らの圧政により、ユダヤ人の反乱甚だしいということで、エルサレムからユダヤ人を一掃(追い出す)ことをしました。古代ローマ帝国の末期では、むしろユダヤ教は保障されていたという記録があります。(「ユダヤ人とローマ帝国」大澤武男著)中世から近世に至るイスラム帝国下でのユダヤ人も、ある程度は生活が保障されていたようですが、むしろユダヤ人に敵意を示したのは残念ながらキリスト教徒でした。そして、近代ではナチス・ドイツによるユダヤ人殲滅計画が記憶に生々しく、そして現代ではキリスト教は比較的ユダヤ人に対する敵意は治まってきた反面、イスラエルと国境を接するイスラム諸国の、特にイスラム教過激派によるユダヤ人殲滅のジハードが声高々に叫ばれています。

このように、古代から現代に至るまで、ユダヤ人は常に身に危険を感じながら生活しているのです。「自分はいつか殺されるのではないか、それも自分が○○人であるがゆえに」という恐怖は、恐らくユダヤ人以外の民には想像がつかない恐ろしさでしょう。


http://www.life123.com/holidays/jewish-holidays/purim/purim-2.shtml#STS=g1el74hp.i01より引用
エステル書の朗読の祭「ハマン」という個所が出たら、床を足で蹴ったりこの「グレゴー」でがらがら音を
出して「ハマン」という名前が聞こえないように騒がしい音を立てます。

プリムの祭りの祝い方:

プリムの祭りの日、シナゴーグでエステル書の巻物「メギラー・エステル」を朗読します。その時「ハマン」という言葉が出たら、上記の「グレゴー」という音のなるおもちゃや紙で作ったラッパなどで騒々しい音をたてて「ハマン」という名前が聞こえないようにします。これは、(出エジプト17:14)主はモーセに仰せられた。「このことを記録として、書き物に書きしるし、ヨシュアに読んで聞かせよ。わたしはアマレクの記憶を天の下から完全に消し去ってしまう。」というみことばから、このような伝統が生まれました。(いつから始まったのかは不明ですが。)


http://www.jerusalemshots.com/Jerusalem_en98-8051.htmlより引用
2008年エルサレムでのプリムの祭りの様子

そして、プリムの祭りの日には、皆思い思いの「仮装大会」が行われます。通常はエステル記に関係する仮装をするのですが、最近はエステル記とは関係ないスーパーヒーローやプリンセスなど、自由な仮装をすることが多いようです。


Wikipedia "Purim"より引用
「ハマンの帽子」と呼ばれるお菓子「ハマンタッシェン」
とてもおいしいです。

プリムの祭りに必ず用意されるのが、上記の「ハマンタッシェン」と呼ばれるお菓子で、「ハマンの帽子」あるいは「ハマンの耳」という意味です。皆でハマンの帽子を食べてしまおうというのが趣旨ですが、東ヨーロッパの「アシュケナジー系」ユダヤ人の間では、中世に「ハマンのポケット」と呼ばれていたお菓子があったようですし、地中海沿岸に住んでいた「セファルディー系」ユダヤ人の間では「オツネイ・ハマン」(ハマンの耳)というお菓子があり、それはちょうど1492年のユダヤ人がスペインから追放された年の前後が発祥だということです。

http://www.jewcy.com/post/jewish_mythbusters_haman_wore_three_cornered_hat
Jewish Mythbusters: Haman Wore A Three-Cornered Hat?より引用


http://www.chocolategelt.com/catalog/abundance-israel-purim-gifts-case-p-1234.html より引用
プリムの祭りは、恵まれない子どもたちへ、このような楽しいプレゼントを贈るという風習があります

参考文献:
聖書(新改訳)
メシアニック・ジュダイズム ダン・ジャスター著(マルコーシュ・パブリケーション)
ユダヤ人とローマ帝国 大澤武男著(講談社現代新書)
Jewish Mythbusters: Haman Wore A Three-Cornered Hat? http://www.jewcy.com/post/jewish_mythbusters_haman_wore_three_cornered_hat

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